今日まで4日間(2012年9月4~7日)、北京で開催されたNanotoxicology 2012に参加していました。
(学会会場は、貴賓館!)
今回は、他でもよくあるナノ材料の有益性・動態・有害性評価・技術開発・分析・曝露評価・環境影響に加えて、Ethical, Legal and Social Issues of Nanotechnologyというセッション(3日目の午後)のあったことが特色であったと思います。
この問題について、私は以前から注目していた論文はこちら。
-----
・Schulte & Salamanea-Buentello (Epub 2006)
Ethical and scientific issues of nanotechnology in the workplace. EHP 115: 5-12 (2007)
-----
一方、この分野では次の論文が軸の一つになっているようです。
-----
・Maynard AD's comment
Don't define nanomaterials. Nature 475: 31 (2007)
-----
これら以降に主張・議論されていることの要点をまとめると、次のようなことが挙がってきます。
・Nanotoxicologyを「ナノ材料」という括りで議論するのは詭弁である。
・“ナノサイズ”という定義に基づくアプローチではなく、材料の特性に基づいたアプローチが必要である。
・“Emerging risk(新たに見出されたリスク)”というのは結局明らかではないものであり、現行のリスク評価やリスク管理手法では評価や管理のできないものにすぎない。真のリスクがどこに存在するのかを明らかにする方向付けが必要である。
・“Case”(どの場合に誰に起こるリスクが議論になっているのか)について、議論の際にもっと注意が払われるべきである。
内容自体は、従来のセッションでも触れられることを哲学的な分野から捉え直しただけという面もあります。しかし、古典的な形で触れられてもなかなか変わらないことを、従来と異なる形で捉え直すことには意義もあるとは思います。
●他の参考ウェブページ
・Nordmann A (2007)
If and Then: A Critique of Speculative Nanoethics. Nanoethics 1: 31-46
・Ferrari & Nordmann (2010)
Beyond Conversation: Some Lessons for Nanoethics. Nanoethics 4: 171-181
この分野は決してメジャーではなく、セッションの参加者も多くありませんでした。しかし、それだからこその楽しさもありました。
セッションの後には、個人的にGeorge Khushf氏(Univ. South Carolina、米国)がいろいろな話をしてくださったり。また、セッションの最後に写真撮影があったのですが、私も(単なる参加者の一人であったにも関わらず)そこに入れさせてもらったり。座長の一人であったGuoyu Wang氏(Dalian Univ、中国)が誘ってくださったのですが、こんなことは初めてのことでした。
+++
学会最終日(4日目)の今日は、私自身も発表を終えました。国際学会での口演は、私にとって5回目でした。
今回は、他の研究者から学会中前日までに尋ねられた内容を、私が準備したプレゼン資料の準備でおおよそ網羅できていました。そのため、今回の口演の出来にはそれなりに満足しています。
○Umezawa M, Suzuki K, Kubo-Irie M, Shimizu M, Oyabu T, Tainaka H, Yanagita S, Takeda K:
Effect of titanium dioxide nanoparticle transferred from pregnant mice to their offspring on urinary and cranial nerve systems.
そして今回、うちの助教がポスター賞をいただきました。先日ここで紹介した私の論文(→こちら)の内容も入れていただいていたこともあり、とても嬉しいです。
○Tachibana K, Takahashi Y, Kuroiwa N, Oba T, Umezawa M, Takeda K
Effects of prenatal exposure to titanium dioxide nanoparticles on dopaminergic systems in mice.
●前回(2010年大会)の参加報告-1(2010年6月2日)
●前回(2010年大会)の参加報告-2(2010年6月3日)
+++
学会をすべて終えていただいた中華は、美味しかったです。
(※人のいない方向を狙って撮りました。)
明日、帰国の途に就きます。