血糖の連続的モニター法「CGM」

 糖尿病で問題になるものとして、網膜障害、腎機能障害、末梢神経障害の三大合併症のほかに心筋梗塞脳梗塞があります。これらの梗塞の発生リスクには、血糖値の高さだけでなく、その日内変動の大きさが問題になるそうです。そもそも、血糖値の日内変動を把握することが、糖尿病患者の血糖をコントロールするときに重要であることも事実です。
 それにも関わらず、血糖値の連続的モニターは(2年以上前まで)実際的に不可能でした。従来の測定法では、測定時以外の血糖値を知ることができなかったためです。

 これを克服する「CGM」(*1) という方法が、一度の処置で連続的な血糖値の推測を可能にするものとして最近開発されました。この方法は、「電極とグルコースに反応する酵素を含む微細なセンサーを皮下におき、皮下間質液中のブドウ糖を持続的に測定する」(*2) ことによるものです。測定者が機器を操作できない時間帯(多忙な仕事中や睡眠中など)の血糖値を推測できるという意味で、この方法は画期的であるという考えに私も同意します。

 *1:「CGM」は、連続血糖測定(Continuous Glucose Monitoring)の略。
 *2:「糖尿病ネットワーク」ウェブサイト内の記事『CGM(持続血糖測定)で「人工膵臓」実現の夢 米国で研究』(2009年10月14日)より


 さらに私は、この方法が血糖値の日内変動をモニターできるだけでなく、その変動と梗塞の発生リスクとの相関を明らかにするためにも有効である点に注目しています。


 糖尿病の「三大合併症」である末梢の障害は、持続的な血糖の高値が微細な末梢血管を傷めることにより引き起こされると言われています。一方で、糖尿病患者で血糖値の日内変動の大きい場合には、その変動が大きな血管に対する負荷となり、心筋梗塞脳梗塞のリスクとなっているという考えがあります。もしこれが事実であれば、そのリスクの発生を防ぐ目的でも、血糖値を継続的にモニターすることが重要になります。(もちろん、糖尿病患者の治療時に血糖コントロールを適切に行うためにも、血糖値の連続的モニターが有効であることは言うまでもありません。)

 血糖値の連続的なモニターを可能にしたCGMは、糖尿病治療において今後ますます重視される可能性があるのではないでしょうか。さらに、血糖値の日内変動と梗塞の発生リスクとの相関が明らかにされ、糖尿病の合併症予防が実現することを期待したいと思います。

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 なお、CGMの開発は、これを「インスリンポンプを組み合わせ」ることにより「血糖値を計測しつつ、血糖値が下がり過ぎるとインスリンポンプからのインスリンの注入が自動的に止まる機器」(*3) を作ることも可能にしました。上の*2のタイトルになっている“人工膵臓”は、この機器のことを表現した言葉であるようです。

 *3:ウェブサイトCaloo」内の記事『CGMで1日の血糖値の動きを知ることでより的確な糖尿病治療を行える』(2011年01月12日)より