生活習慣と肥満・糖尿病―薬学会環境・衛生部会「フォーラム2011」参加報告

 2011年10月27~28日の2日間、「フォーラム2011:衛生薬学・環境トキシコロジー」(日本薬学会 環境・衛生部会」に参加してきました。私にとって一番興味深く、大いに今後の仕事の参考にしたいと思ったのは1日目の特別講演です。

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2型糖尿病の病態と治療戦略」
戸邉一之氏(富山大学医学部第一内科)

 2型糖尿病動脈硬化や末梢血管や器官の障害を引き起こすため、現在の先進国で寿命を制限している主要因の一つと言われます。
 一方で、「カロリー制限をすると長生きできる」というのは動物で見られる現象としてよく言われることです(ただし、もちろん必要な栄養素を十分に摂ることは重要)。この特別講演であがった話題は、なぜそのようなことが起こるのかという話です。

 私なりにまとめると、それは以下のような話でした。

1) 摂取カロリーが多い状態は生体内の組織(とくに脂肪組織)の微小環境に「低酸素状態」を起こすということ。
2) この状態が脂肪組織の大部分を形成する脂肪細胞の性質を変えるほか、その組織中のマクロファージという細胞のタイプも変えること。
3) この変化が、脂肪細胞やマクロファージから出される物質(サイトカイン)のタイプも変える現象を招くこと。
4) さらにこの物質が、脂肪(とくに皮下脂肪)組織中の血管の質を変えたり、5)脂肪細胞の性質を変えて「インスリン抵抗性」のような糖尿病の引き金となる現象を引き起こしたりするということ。

 これらの事実が、「カロリー制限が寿命を延ばす」理由として鍵になっているであろうということでした。これらは聞いていて、私の中にあった断片的な知識のいくつかが、次々とつながっていくようでもありました。


 私は以前に、「高脂肪食で育った父親の子に糖代謝異常」という記事(論文の紹介)をここでも書いています。私はそのようなことに関心を持つ中で、脂肪の多い食事が人の体をどう変えているのか、やせることを望む若い人の体の中で懸念されることは何なのか、それらのうちの望ましくない変化を防ぐためにはどうすれば良いのか― そのようなことを、私の仕事(研究)の大きなテーマの一つにしたいと強く思っています。実際に、そのテーマでの研究を今年から少しずつ始めてもいます。
 何が分かるかな?


 なお、戸邉先生に「運動(スポーツ)の効果はどうですか?」と聞いたら、次のような答えが返ってきました。

 「エネルギーの必要な状態(“飢餓状態”)を一時的に作り出すので、とても良いと期待されますよ。」

 これから、今回の金沢滞在での最後の朝練習に行ってきます。