先日、都内で開催された機器メーカーのセミナーに参加し、プロテオミクス研究で価値ある知見を生み出していく研究の講演を聞くことができました。
『臨床医学研究へのプロテオミクス技術の応用』
柳澤 聖先生(名古屋大・医)
私は、この研究がプロテオミクス解析から疾患(ここではがん)の克服・治療に有用な知見を見出していること、そして、その結果をインフォマティクスを用いて統合的に理解する好例を示している点に関心を持ちました。
同様のオミクス解析を予定している私の仲間たちに、参考にしていただきたい論文です。
・Taguchi et al. (2008)
Cancer Res 68: 5540-5545
miR-17-92群によりBEAS2B株細胞で起こるタンパク質発現パターンの変化の特徴を、LC-MS/MSを用いたプロテオミクス解析により見出した研究。
・Yanagisawa et al. (2010)
Cancer Res 70: 9949-9958
肺がんの転移に関連する遺伝子とそれに発現制御されるタンパク質を同定した論文。転移に関連する遺伝子としてCIM (ERLEC1) をcDNAマイクロアレイの解析データから抽出し、このCIMにより制御されるタンパク質群をLC-MS/MSにより同定している。
プロテオミクス解析データについては、Gene SpringによるGene Ontology解析とKeyMolnentによる経路解析を行い、発現変動したタンパク質に共通の機能の探索を行っている。比較は、高転移性ヒト肺がん細胞株NCI-H460-LNM35と低転移性の細胞株NCI-H460-N15とを用いて行っている。
本論文には、LC-MS/MSによるプロテオミクス解析と、その結果を統合的に捉えるためのインフォマティクスの活用例が示されており、参考になる。