第14回国際免疫学会議‐4日目参加報告

だいぶ疲れも溜まってきたので、無理をせずに、
今日は「システム免疫学」のセッション1本に
関心を絞りました。


WS-086 Systems Immunology
(システム免疫学)

#1 What is "Systems Immunology" for?
 Dr. Osamu Ohara (Kazusa DNA Res. Cent., Japan)

初めは、「システム免疫学とは何か」を考えるための
導入の講演でした。
生物体の各々の「部分」は、相互作用をしながら
全体として次のような“系”を形成しています。
「遺伝子-タンパク質-細胞-組織/臓器-個体」
この系のつながりは、もっとマクロに言うと
「個人や個体と、社会や生態系とのつながり」である。
ワークショップは、このような言葉で始まりました。

ノーベル物理学賞受賞者である南部陽一郎氏は、
これを受賞する3年前の2005年に、こう語ったといいます。
"Biology now is study of 'the hardware of life'.
 What is 'the software of life'?"
システム生物学という分野のモチベーションの一つにも、
こういう考えがあるのだそうです。
その対象を絞った言い方が、「システム免疫学」。
まだまだ、解釈は容易ではないですけどね。


#3 Next generation 31-parameter flow
 cytometry reveals systems-level
 relationships in human bone marrow
 signaling and homeostasis

 Dr. Erin F. Simonds (Stanford Univ., USA)

この研究では、mass cytometry(*)という
手法が使われていました。
単一細胞の液滴を噴霧し、イオン化して
質量分析にかけることにより、
細胞表面や細胞表面の数十のマーカーを
一度に定量してしまおうという方法です。

この「次世代フローサイトメトリー」と呼べる
方法により、解析に供した細胞が
機能的にどのシグナル経路に乗っているかを
解析することができるとか。
難しかったですが・・・。

(*) Mass cytometryという言葉は、
 まだ日本語訳も充てられていないようです。
 詳細は、次の論文をご覧ください。
 Bandura DR et al.
 Anal. Chem. 81(16): 6813-6822 (2009)


#4 Organization of the autoantibody
 repertoire in healthy newborns and adults
 revealed by system level informatics of
 antigen microarray data

 Mr. Asaf Madi (Tel Aviv Univ., Israel)

「抗体マイクロアレイ」を用いて、
血中の抗体の結合活性を測定した研究です。
特に、この母子間での相同性を解析していた点が
興味深かったです。

結果として、子の持つIgGのタイプは母の持つものと
非常に似ているという結果が示されていました。
一方で、IgMにはこのような類似性は見られないそうです。
これは、IgGが胎盤を通過するという知見と
矛盾しない結果であるということです。

発表抄録には、自己抗体が健康な人の体内の
恒常性を維持する機能を持っていると書いてあり、
私はその点にも驚きました。
しかし、発表者は計算科学が専門の人だったので、
その点を詳しく確認することはできませんでした。
後ほど発表論文で確認しようと思っています。

 Madi A. et al.,
 PNAS 106(34): 14484-9 (2009)

この方とは、初日から顔見知りになっていたので、
いろいろな話をすることができました♪




こちらは、飽きずにポートライナーからの写真。
これを見ずしては、学会を乗り切れません。
港と山が一望できる景色。癒されます。



こちらが、学会会場の一つになっている
ポートピアホテル。
去年の10月生化学会もここでしたし、
今年12月の生化・分生合同大会もここですね。
(私は、この合同大会には初めて参加予定なのですが、
 きっと、人の数がすごいのでしょうね。
 見るセッションはかなり絞って、できるだけ
 会場内での移動を少なくするのが賢明でしょうか。)



最後にこちらは、学会の後に
三宮でポートライナーを降り、そこから
ホテルまで歩く途中の道。
今は夏の終わりですが、次回は冬。
景色を覚えておいて、その違いを
楽しみにしたいと思います☆