20人? 5人? 意思決定に有効な会議の規模とは

『20人では多すぎる』
~「核の5人」に入れるか~

日本経済新聞の2010年6月14日朝刊、
 5面「オピニオン」欄、
 同社コラムニスト、土谷英夫氏コラム)


「閣僚数が20ないし22人になると、」
「一般に普通のメンバーが会議を開く前に、
 5人の重要なメンバーが前もって打ち合わせ
 をして、大体の決定をしてしまう。」

英国の政治学者、シリル・ノースコート
パーキンソン氏の「閣僚の定数」と題する
一文に基づいた、日経のコラムの紹介です。


国の政策決定の機関(日本では、内閣)や、
世界のルールを決める合議体(首脳会議)は、
20人ほどで行われる場合、その各々が
担うべき役割を果たすことができるのでしょうか。

例えば、世界の“先進国”や“新興国”が集められ
世界の経済戦略の取り組みを決める「G20」。
もし、20人の首脳が1人15分話したとしても、
その発言時間の合計は5時間になります。
この合議体は、果たして機能するのでしょうか。

冒頭で紹介したコラムでは、
国際通貨研究所理事長・行天豊雄氏の
次の言葉を紹介しています。

「(G20に)当事者はみんな入っている。
 しかし、参加者に世界経済の中心的な
 フォーラムとして意思決定する自覚もないし、
 それを担保するメカニズムもない。」

そして、パーキンソン氏の発表した法則通りに
事が進めば、やがてG20のシナリオを用意する
「5人の重要メンバー」が生まれるかもしれないと、
冒頭のコラムには記されています。


かつて、日本も“G7”、“G20”はおろか、
その「蚊帳の外」だったことがあります。
35年以上前の1973年、国際通貨が荒れた際には、
米・英・仏・西独の財務相
米国のホワイトハウスで会合したそうです。

当時の日本は、急成長中の“新興国”。
欧米の4人が世界経済を仕切ると伝え聞いた
愛知揆一蔵相は、ここに日本も入るための
策を講じました。
その欧米4財務相が会合した半年後、
国際通貨基金(IMF)の総会が開かれた機会に、
秘密裏に4人を夕食に招待し、日本食
もてなしをしました。

そして、同じ顔ぶれでの再会を約束することで、
日本は世界経済の決定会議への参加権を
獲得したそうです。

冒頭のコラムでは、このエピソードを紹介し、
20人規模の会議ではなく、“核”の5人規模での
会合への参加権を確保することが、
意思決定への発言権を確保する方法であると
説いています。

そして、
「日本は21世紀の“G5”に入れるだろうか。」
結語として、日本にここが入るための条件として、

「経済、外交、軍事、技術、文化、イデオロギー
 この6つでバランスがとれた大国であれば」

世界の中での存在感を示せるはずであろうという
行天氏の言葉を紹介しています。


私がヨーロッパに滞在していた今月初めに、
またも総理大臣が替わってしまった日本。
世界の中で一定の役割を担い続ける国として、
将来像を見失わないことを切に望みます。


以下、冒頭で紹介したシリル・ノースコート
パーキンソン氏の発表した法則として、
ここに挙げられたもの以上に有名な
パーキンソンの法則」を紹介します。


"Work expands so as to fill the time available for its completion."

「仕事量は与えられた時間を使い切るまで膨張する」
(第一法則)

「支出は収入の額と一致するまで増大する」
(第二法則)

日本では、
「役人の数は、仕事の量に関係なく増える」
といわれ、官僚主義に対する皮肉の意味で
よく使われるそうです。

言葉を換えると、人は資源を
それが尽きるまで使ってしまおうという方向に
動いてしまいがちであるということでしょうか。

英国出身の同氏が、第二次世界大戦後、
植民地を失っていったにも関わらず、
逆にその省の役人を増やしていく
イギリス帝国の植民地省の矛盾を指摘して
発表したものなのだそうです。

この法則は、『パーキンソンの法則
(ブログ「ビジネスのための雑学知ったかぶり」、
 2006年10月12日)などでも紹介されています。