出会ったすべての学生に伝えたいこと

 日本の3月は、年度末の "farewell month"。歩いた数だけ発見があり、出逢った数だけ別れがあります。

 先月、お世話になった先生の告別式で、そして先週、エジプトから帰国するときに多くの方から頂いたfarewell messageを見て。それら2つはまったく違うお別れでしたが、どちらからも改めてそのことを感じました。別れは出逢った数だけあるんだよなと。
 いつからか、別れのときにどんなに惜しい気持ちがあっても、ただただ出逢ったことに感謝すること。私はその感情だけを持つようになりました。

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 私が10歳の頃だったか、強烈に覚えている記憶があります。家族ぐるみで仲の良かった近所の友人が、あちらの家族の引っ越しで遠くに行ってしまうときの話です。親が私のうちでお別れの食事会を開いたのですが、別れ際に私が駄々をこねたんですね。もっとこの友人と遊びたいと。

 学年が違ったこともあり、それまでその子と一緒に遊ぶことは頻繁にはなかったのですが。それでも、別れるときは寂しかったんでしょう。あのときの私は。そうして散々駄々をこねた私に、母はこう言ったのです。

 「そんなに寂しいなら、今までもっといっぱい遊んでおけばよかったのに」って。

 その通りだよな、と思いました。そして、子どもながらの悔しさには違いありませんでしたが、それでもあんなに悔しい思いは二度としたくないとも。

 今の私の場合は大学ですが、学校という場所に長くいると、年ごとに新しい出会いと別れがあります。出会った人とはいつかは必ず別れます。だからやりたいこと、見せたいこと、見たいこと、話したいことは限られた時間で全部やること。そうしたいという気持ちを、少しでも行動にしたいもんだと思ってやってきましたし、これからもそうするだろうと思います。

 そして、どんな人とも出会って以来の関係の中で、それぞれの人とのやり取りの中で私自身の抱いた「自分はもっとこうなりたい」という感情。その一つ一つを自分の骨肉にしていくことが、出会った人の一人一人に対して感謝する一番の方法だと思っています。

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 別れの挨拶と一緒に、いろいろな学生が私に訊いてくることがあります。

 もっと○○○を知りたいのですが、どう学んだらいいですか、って。もっと○○○をうまくやりたいのですが、どうしたら、って。○○○で成功するにはどうしたらいいのか、って。
 あたかも、成功するための秘訣がどこかにあるかのように。

 「成功するための秘訣」など私にも分かりませんが、一つだけ言えることがあります。それは、何かで成功した人は、必ずたくさんの失敗をしているってことです。それも、他人から見たら分からないぐらいの失敗をたくさんしているもんです。

 それは、多くの失敗をするということが、それだけ多くのことを「やってみた」ということに他ならないからです。うまく行くか行かないかでなく、新しい何かをやってみること、とにかく何か一つ試してみること。それが、自分が変わること、自分のなりたい姿に少しでも近づくこと、それにつながる道に違いありません。自分が変わった結果、何か新しい成果を手に入れたとき、人はそれを成功と呼ぶのでしょう。

 誰にとっても、自分の知らないことをやってみるのは、大なり小なり怖さを伴います。でも、それをやってみることだけが、その怖さを越える唯一の方法でもあるんです。

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 エジプトからの帰りの飛行機で、私がこれまでに出会ったいろんな学生の顔が浮かんできて、一緒に思い浮かんだ言葉を必死でメモしました。ここにその内容を書いておこうと思います。

 I always believe tomorrow becomes better and more fantastic than today. Our task is doing something for it. Start to try something new one, however small, everyday. Start to do something what you haven't started but really want to do.
 1日1つ、何か新しいことをすること。どんなに小さいと思えても、新しいことを1つすること。何をしたらいいんだろうと思ったら、本当はしたいのにまだしていなかったことを、1つやってみること。

 I am very happy if my greetings with you and knowing each other will make your todays and tomorrows better, and will enrich your own lives and myself's.

 Thanks all, and always be with you, and
 Enjoy yourself.