岩波『科学』10月号に「ナノ材料による次世代健康影響とリスク管理への課題」

 岩波『科学』の2012年10月号に、ナノ材料のリスク評価についての私の論考を掲載させていただきました。


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●「ナノ材料による次世代健康影響とリスク管理への課題」
(梅澤雅和、『科学』82(10): 1098-1103、岩波書店、2012年10月号)
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 内容は、今年3月のエントリ「ナノ粒子の生体影響評価・生殖発生毒性評価の問題点」に関連したものですが、当然ながらもっと内容を精査し、理解していただけるようまとめたつもりです。

 また、今回ははじめ「次世代健康影響」について書いてほしいという依頼だったところを、こちらからお願いして「解決すべき課題」に原稿の約半分を割かせていただきました。私の意を汲んでくださった編集部の方に感謝しています。
 国際的な議論の場でも “分かっていてもなかなか速くは進まない(が、意識次第ですぐにでも変われると思う)課題” を中心に、少々思い切って書きました。
 少しでも関心をお持ちの多くの方に読んでいただければ幸いです。

 (※2013年1月9日追記: 本稿執筆にあたっては、多くの人に読みやすくなるようにと、私の共同研究者でもある有為な学生が原稿の編集をしてくれました。おかげで好評も頂いており、心より感謝申し上げます。)

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 さて、今回の原稿は、学生のときからご指導をいただいている教授と目次を並べての掲載になりました。恐縮ですが大変嬉しく思っています。

●「母子伝達されるナノ粒子:次世代健康影響を考える」(武田健、同 pp.1093-1098)

 また、その直前に掲載された原稿も、私が目指したいところに近い興味深い研究技術の話題。網羅的な遺伝子発現解析から、環境要因に対する生体の確率的応答を読み取ろうとする研究の内容です。

●「放射線に対する生体の“確率的”応答」(井上達・平林容子、同 pp.1078-1092)

 さらに同号冒頭のコラムは、昨年3月の原発事故に由来する放射性物質の“ホットスポット”が“ホットエリア”に移行していることへの懸念が、私の住む茨城県守谷市ホットスポットを例に解説されていました。

●「警戒区域外の住民に対する被曝管理体制の疑問」(小豆川勝見、同 pp.1059-1062)

 守谷にホットスポットがあることは、ニュースや立ち入り規制の現場を見て知っていましたが、私の原稿が載った号と同じ誌上で、「守谷」の名前を見ようとは。
 私にとって初めての岩波『科学』への原稿掲載は、個人的になかなか印象に残るものになりました。

 この雑誌では、以前から社会の中の「リスク」の問題も数多く取り上げられています。私自身これからも読んで、勉強させてもらいたいと改めて思っているところです。


●追記:
岩波『科学』2013.4月号にPM2.5の特集(2013年4月5日)
『市民研通信』2013.4月号に「ナノ粒子の健康リスク」(2013年4月16日)