旅と現代の歴史について『世界を歩いて考えよう』

 ちきりんさん(@InsideCHIKIRIN)著の『世界を歩いて考えよう』(大和書房、2012)。この本を読むと、旅の楽しさだけでなく、1980年代以降の世界の国々の変化の一端が分かります。
 以前にも書きましたが、私は近代・現代の歴史がどう動いているのかに関心があります。そこで、この本は思わず買って読みました。

 ソ連崩壊前後のソ連・ロシアや、ビルマ(現・ミャンマー)の旅の記録は貴重です。「やる気のない観光大国 イタリア」の表現には、膝を打って笑ってしまいました。そして、「戦い続けるシンガポール」。我らが日本がどちらに近いかと言うと・・・

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 他にも、印象に残ったもののいくつかを挙げてみます。これが、「旅」と合わせて語られている点が面白いのです。

 ・自国通貨への国際的な評価が高いことの有利さ―(「自国通貨を欲しがらない人達」から)
 ・「メディアで報道される外国のイメージ」と、「実際にその国で自分が感じる印象」のギャップ―(「共産主義国への旅」から)
 ・地図に38度線の書かれていない、韓国の天気予報

 本書にも書かれていますが、アジアの様子は1990年~2010年の間に大きく変わったと思います。とはいえ、その前半に10代だった私は、「変化する前」の様子をリアルタイムには知らないのですが。
 私が今月(2012年9月→滞在の記録はこちら)に見た北京の国際空港(北京首都空港)は、広くてよく整備もされていて、さすがはこの10年ほどで経済発展をしてきた国の顔という感じでした。



 数と広さがモノを言うところはどんどんこの国(中国)に強くなってもらい、そうでない所で私たちの国(日本)は勝負すべきなんだと、この空港を見たときで私は思いました。そしてその気持ちは、北京の街を走って歩いて回っても変わりませんでした。

 この本の話に戻りますが、本書は何より、終盤の「豊かであるという実感」が必見です。「お金さえあれば」解決できる社会の豊かさ、「格差の認識」がされている社会の豊かさ、用心と安全、光と水・・・・・・あとは、ぜひ本書を読んでみてください。
 今日は「豊かな日本をつくっていく」とおっしゃる元首相が、私たちの国の一党の総裁に再びなられたところですし。

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 蛇足ですが、これに私はすごく同意してしまいました。

 ・「現地文化から切り離される地上の楽園」の「『偽物感』を違和感なく楽しむのはちょっと難しい」

 しかし、時が経てば、それも歴史を作る一幕になるのかもしれません。

 もっと、「旅から世界の動きが見えた話」を読める本が増えたらいいと思います。