ヒ素環境下で生育可能な微生物の発見

今月初め、生物学を大きく賑わせる研究発表がありました。
「リンの代わりにヒ素をDNA中に取り込む微生物の発見」
というNASAによる報告です。
論文は、2010年12月2日の米国の学術誌Science上に
掲載されました。

Wolfe-Simon F. et al.
A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus
Science, Published Online 2 December 2010

これが発表された日は、私も
「ATPはどうなっている!?」などと騒いだものです。
この研究発表に関して、興味深く分かりやすい解説が
ウェブにいくつか上げられていますので、紹介致します。

「ヒ素生物」の衝撃(2010年12月4日)
続報・「ヒ素生物」は本物か?(2010年12月10日)
(ブログ『有機化学美術館・分館』より)

「NASA発表:ヒ素を利用して生息する微生物を発見」と
  その後の議論に対する専門家コメント

(社)サイエンス・メディア・センターより、同12月11日)


緊急の課題は、DNAやRNAなどの核酸、タンパク質、
リン脂質やATPのどこにヒ素(As)原子が入っているかを
明らかにすることでしょうか。
学術誌Natureの論説では、報告された微生物が
本当に「ヒ素を利用して生育できているのか」が
証明されていないことなどの課題を指摘しています。

Katsnelson A
Microbe gets toxic response
Nature 468: 741 (7 Dec 2010)

今回のニュースは、解決すべき課題を抱えつつも
驚きと議論を巻き起こしたものであることは
間違いありません。
今後の研究の進展に注目したいと思います。