リスク・コミュニケーション・パターン集を公開しました

 1年半が経ってしまいましたが、2012年8月に実施したリスクコミュニケーションのワークショップの成果物を公開しました。

 こちらです ⇒ リスク・コミュニケーション「ジレンマ状況 問題+対処法」パターン集(作成:2012夏ワークショップグループ、2014年2月1日発行、同2月14日公開)

 リスクの可能性を伝えることには、デメリットもあります。たとえば有用性のあるもの、産業利用が大きく期待されるものについて、不安を煽って過剰な拒否反応を生んでしまうと、未来の有用材料を潰してしまうことにもなりかねません。そもそも、あらゆるリスクの問題は 「トレードオフ」 の問題を内包します。

 過剰反応も無視も、有害なリスクの回避にはつながりません。一方でリスクの情報の共有によって促されるべきは拒絶や無視ではなく、リスク回避に他なりません。それを実現するためには何が必要かという問いを立てたときに、我々が手にした一つの答えがこのパターン集作成の試みでした。

 公的なリスク管理者が規制を行えるようになる以前の段階で、私たち一人一人が効果的・実際的にリスク回避を促し、実現できるリスク・コミュニケーション手法を提示できないか。情報共有には使える時間もメディア/チャネルも限られる中で、どのようなコミュニケーションが効果的と言えるのか。

 その答えの一端を示したのが、本パターン集です。ここでは、実際にリスク情報の提供をする人(コミュニケーター/専門家)がその場に臨むにあたり、遭遇し得る問題と解決策のヒントを示すことを目指しました。本パターン集は、リスク・コミュニケーションの経験があったりこれに問題意識を感じたりする人たちの手によって、各々の経験や考えが集められて完成したものです。いわば、リスク・コミュニケーションについて暗黙知となっているパターンを形式知にした試みの結果として生まれたものです。

 今後、同様の “リスク・コミュニケーション パターン集” 作成の試みが繰り返し行われることで、より普遍的なパターン集が完成に近づくことを期待しています。そしてその結果として、少しでも多くの人々に有用な情報が効果的に行きわたるようになることを切に願ってやみません。
 (「おわりに-パターン集の作成を試みたワケ」より、一部改)

 パターン集作成にあたりご協力を戴きましたすべての人たちに、深謝申し上げます。