金星探査機「あかつき」打ち上げ~金星を知って何を知るか

2010年5月21日6時58分22秒、
たった今、金星探査機「あかつき」が
種子島宇宙センターより打ち上げられました。

日本初の金星探査機「あかつき」打ち上げ
 (2010年5月21日、読売新聞)

この金星、太陽系で地球の一つ内側を
回っている“隣の星”です。
そして、地球とは似て似つかない星です。
皆さんはご覧になったことがあるでしょうか。
おそらく、見たり、話を聞いたりしたことは
あるかと思います。

「宵の明星」「明けの明星」と呼ばれる星です。

この金星は、大きさなどが地球と似ていますが、
気候や大気の組成が大きく異なっています。
具体的には、以下のような違いが挙げられます。

・大気の96.5%が二酸化炭素
・地上の大気の圧力が地球の90倍
・地上の温度は400℃台
・上空を高速の風が吹き続けている
 (スーパーローテーション
・二酸化硫黄の厚い雲が全体を覆っている

この厚い雲は金星の表面上の観察を妨げ、
雲の下の過酷な条件は、観測機の侵入も
困難なものにしていたそうです。
この観察を実現するためには、
様々な工夫が必要であったはずです。

今回の金星探査では、
雲の中から金星表面までの様子を
観察することが目的であるそうです。
5台の特殊なカメラを用いて、
雲の上からこれを観察するということです。

その目的は、この金星の
地球とは違う仕組みで吹く風や、
地球と異なる気候の詳細を調べることで、
地球の気象の謎に迫ることなのだそうです。

地球の上で起こることについて深く知るために、
地球の外をよく観察することも有効なのですね。


たしかに、地球の上の常識だけを見ていては、
その“常識”が常識である所以を見逃してしまう。
そういうことがあるように思います。

地球上の環境は、どのように形成されたのでしょうか。
地球と金星とは、大きさなどは似ているのですが、
なぜ大気の組成が大きく異なるのでしょうか。

Wikipediaによると、これは
地球では生物が誕生したためであり、
さらにそれは、地球では水が凝縮して海ができた
(そして、そこに二酸化炭素が多く溶け込んだ)から
ではないかという説があるそうです。

水が蒸発しないで海が形成されるための、
惑星の太陽からの距離や惑星自体の大きさ。
やはり、これを満たした地球の性質が
奇跡的なものなのでしょうか。


それにしても、
自分の星のことを知るために、
隣の星のことを知る必要がある。

転じて、自国のことを知るために、
外国のことを知る必要がある。

自分のことを知るために、
他人のことを知る必要もある。

表面に激しい性質を持つ金星のことを
知ろうとする人たちのエネルギーから、
私は、“何かを知る”、“自らを知る”ということの
深さを、改めて感じたような気がします。

H2A、打ち上げ成功 「あかつき」分離
(2010年5月21日7時27分、日本経済新聞