みんなで「新しいタネを蒔ける」場所へ

 今年度、2021年4月に「ナノメディカル工学」の研究室を立ち上げました。前年度まで研究の拠点にしていた研究室では5年間お世話になり、面白い研究に集中できる環境と外にも出るチャンスに満ちた、この上ない研究環境をいただいていました。その研究環境に甘えるだけの立場にいるわけにもいかず、そんな環境を新たに一つ作りたいという考えとともに、配属する学生をsupervizeする立場になって新年度を迎えたところです。
 
UmeLab Website @東京理科大学 先進工学部

 2015年度まで薬学部を拠点に、疾病の治療だけでなく「人はどうしたら病気にならないのか」を追究してきたのが5年ちょっと前までのこと。その年度末に、「バイオイメージング研究の『バイオ』の部分はひと通り担当できると思います(やらせてください)」の一文で、「光る材料」を扱う工学系の研究室に研究の拠点を移したのが2016年4月。このとき、一瞬で迎える体制を整えてくれた教授と秘書さん、当時の助教さんには感謝するばかりです。

 しかし、そもそも「工作」という工の付くものが苦手な私(なお「工事」も苦手)が工学系ラボでどこまでやれるか、本当に楽しくやれるのかは、正直やってみないと分かりませんでした。無理だと思ったら半年でも出ようと思っていたところ、結局いさせてもらった期間は丸5年間。どれだけ楽しかったというべきか。しかもその間に、どれだけの数の新しい研究課題を任せてもらい、経験させてもらえたことか。ラボワークを共にして一緒に研究を楽しんでくれた人たちに感謝するばかりです。

 工学系の研究室で相対する学生たちのほとんど(というより全員)は、私自身が大学以降で経験してきたものとはまっっったく違う分野を「専門」の軸として学んでいる人たちです。その人たちの中で私がどう振る舞えるのか、どんな役割を担えるのかということもこの5年間のチャレンジでした。
 この間、学生の研究にコミットすることは立場的には必須でありませんでしたが、学生たちは研究室にいれば顔を合わせ、ゼミがあれば意見交換をすることになる人たち。元の分野の違う私は学生にとって「会(遭)わなくてもよかった人」とも言えるわけで、じゃぁその立場で自分がどういう姿勢を示せるのかとか、どうしたら「思わぬ遭遇」をプラスの機会にできるかとか。そういうことを、毎日のように自身に問いながら大学での研究室ワークを楽しんだ、昨年度までの5年間でした。

 “フィールド”(分野)を変えた結果、
否が応でも他人を頼らないと何もできない状況が格段に増えました。しかし、何か新しいことをしたいと思ったときには、分野なんかを変えなくたって人を頼らないと前に進めないことがあるのは当然のことです。助けてもらって各プロジェクトの一つ一つのステップをクリアしていくことの面白さを、目の前に並んだいくつもの例で経験できたこと(本当にいくつあったことやら)が、この5年間で得た財産です。

 この間、人に頼ることで広がる可能性を教えてくれた人たちに感謝。
これからも頼れることは人に思いっ切り頼りながら、山ほどある「やってみたいこと」の一つ一つを、これからも一つ一つやってみていきたいと思っています。

+++

 しかし、2012年秋に「ポスドク」のポジションを終えたときに、こんなに研究に没頭する力を試して楽しめる時間・環境をもう一度持てるとは思ってもみませんでした。そんな環境のタネを、私自身少しずつでも周りに蒔いていけるようになりたいものです。

f:id:umerunner:20210623093933j:plain
 ※昨年度末に、前の研究室の学生たちが作ってくれたエントランスプレート。右端のロゴを自由な配置で入れるのは大変だったのではないかと・・・。とても嬉しい贈り物でした。大切に使います。

体内深部の蛍光温度イメージングの研究発表@Quantitative Bioimaging2019
●論文発表 (2018年末)―単層カーボンナノチューブの特異な細胞内挙動
●卒業生との発表論文 (2019春)―生体試料の透明化を速めてみたい
●卒業生との発表論文 (2019秋)―近赤外蛍光寿命イメージングによる非接触温度測定
●月刊『画像ラボ』別冊号に「OTN近赤外蛍光イメージングのバイオメディカル分野への応用」寄稿 (2020春)
●論文発表 (2020夏)―OTN近赤外蛍光CT(断層画像法)「生体はどうしたら透明になるのか」